これからの毎日を支える。更年期世代に意識したい筋力の話

軽やかに歩き続けるために、日常の中で少しずつ筋力を育てていきましょう。
以前より階段がつらい。床から立つとき、無意識に手をついている。重い買い物袋を持つのがおっくうになった。
それほど困っているわけではなくても、日常の中で楽な動きや方法を選ぶことが増えていませんか。
更年期世代にとって、筋力を保つ目的は、若い頃の体形に戻すことだけではありません。行きたい場所へ自分の足で出かける、家事や仕事を無理なく続けるなど、これからの生活を支えるためにも大切です。
今回は、日常動作と筋力の関係、自宅で無理なく始められる習慣をご紹介します。
更年期世代に筋力を意識したい理由
筋肉は、特別な運動をするときだけに使うものではありません。
椅子から立つ、歩く、姿勢を保つ、荷物を持つといった日常の動作も、さまざまな筋肉に支えられています。しかし、筋肉量や筋力は加齢とともに低下しやすく、座って過ごす時間が長い生活では、筋肉を使う機会も少なくなります。
更年期には、ほてりや疲労感、睡眠の乱れ、関節の違和感などによって、体を動かすことがおっくうになる日もあります。仕事や家事、家族のケアなどが重なり、運動のための時間を取りにくい人もいるでしょう。
ただし、「更年期だから筋力が急に落ちる」と決めつけることはできません。体の変化には、年齢、活動量、食事、睡眠、病気など、さまざまな要因が関係します。
大切なのは、以前の自分と比べて落ち込むことではなく、最近の生活で体を使う機会が減っていないかを見直すことです。
最近、無意識に避けている動きはありませんか?

何気なく選んでいる「楽な動き」も、体の変化に気づくきっかけの一つです。
筋力の変化は、鏡に映る体形だけに表れるものではありません。
以前より階段を使わなくなった、低い場所から立ち上がるときに何かにつかまりたくなる、外出後の疲れが長く残る。このような小さな変化の背景に、筋力や体力の低下が隠れていることがあります。
「まだ運動に困る年齢ではない」と思っていても、楽な動きを選ぶことが増えると、筋肉を使う機会はさらに少なくなります。
まずは、毎日のどのような場面で体の変化を感じているか、振り返ってみましょう。
1.階段や立ち上がりを支える「脚とお尻」
「脚は毎日使っているから、特別に鍛えなくても大丈夫」と思っていませんか。
歩く、立ち上がる、階段を上るといった動作では、太ももやお尻の筋肉が体を支えています。ところが、エレベーターや車を使うことが増えたり、座っている時間が長くなったりすると、歩いているつもりでも筋肉へ十分な負荷がかからないことがあります。
最近、次のような変化はないでしょうか。
- 階段よりエスカレーターを選ぶことが増えた
- 坂道を歩くと以前より疲れる
- 低い椅子や床から立ち上がりにくい
- しゃがむ動作を避けるようになった
- 外出すること自体がおっくうに感じる
階段や坂道のつらさには、筋力だけでなく心肺機能や関節の状態なども関係します。ただ、太ももやお尻は、立つ・歩くという基本的な動作を支える大切な部分です。
脚は上半身とは関係がないように見えますが、立った姿勢を下から支える土台でもあります。脚とお尻を使える状態にしておくことは、活動的に動き、安定した姿勢を保つことにもつながります。
2.疲れにくい姿勢を支える「お腹と背中」
お腹や背中の筋肉というと、引き締まった体形をつくるためのものと思われがちです。
「お腹はそれほど出ていないから、自分には関係ない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、お腹と背中の筋肉は、見た目だけでなく、上半身を支え、立つ・座る・物を持つといった動作を安定させる役割があります。
長時間座ったあとに背中が丸くなる、立っていると腰まわりが疲れる、パソコンやスマートフォンを見ていると首や肩がつらくなる。その原因を筋力不足だけに決めつけることはできませんが、お腹や背中を含む体幹の筋肉は、姿勢を保つための要素の一つです。
姿勢は、服装やメイクと同じくらい、その人の印象を左右することがあります。顔だけを若々しく見せようとするより、楽にすっと立てる体を意識することで、全体の印象が自然に変わることもあります。
3.持つ・押す・支えるための「上半身」
買い物袋が以前より重く感じる、高い場所に物を上げづらい、ペットボトルのふたを開けにくい。このような変化には、腕だけでなく、肩や胸、背中など上半身の筋肉も関係しています。
上半身の筋肉は、荷物を持つ、ドアを押す、洗濯物を干す、寝た姿勢から体を起こすなど、日常のさまざまな場面で使われています。
脚と比べると、普段の生活では意識して負荷をかける機会が少なく、変化に気づきにくい部分です。「まだ持てるから大丈夫」と考えるのではなく、以前より負担に感じる動作がないかに目を向けてみましょう。
自宅で始める小さな筋力習慣
筋力を保つために、最初からジムへ通ったり、重いダンベルを持ったりする必要はありません。自分の体重を利用する運動も筋力トレーニングに含まれます。

特別な道具がなくても、日常の中で筋肉を使う習慣は始められます。
椅子からゆっくり立って座る
安定した椅子に腰かけ、足を床につけます。体を少し前へ傾けながら立ち上がり、ゆっくり座ります。
太ももやお尻を使う動きです。必要であれば、最初は机や椅子の背に手を添えて行いましょう。
かかとを上げ下げする
壁や椅子に手を添え、立った状態でかかとをゆっくり上げ下げします。ふくらはぎを使い、立った姿勢での安定にも関係する動きです。
壁を使って腕立て伏せをする
壁に両手をつき、体をまっすぐに保ちながら、肘を曲げて上半身を壁へ近づけます。床で行う腕立て伏せより負荷を調整しやすく、腕や胸、肩まわりを使えます。
座り続ける時間を短くする
トレーニングの時間を確保できない日は、長く座り続けないことから始めてもかまいません。
飲み物を取りに行く、電話中に立つ、一つ上の階まで階段を使うなど、生活の中で動く回数を増やしてみましょう。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人と高齢者に週2~3日の筋力トレーニングが推奨されています。ただし、毎日必ず行うという意味ではありません。体調に合わせて休息日を設け、少ない回数から始めましょう。
変化は見た目だけで判断しない
筋力トレーニングというと、体重や体形の変化に目が向きやすくなります。しかし、筋肉を使う習慣による変化は、見た目だけに表れるわけではありません。
- 階段を上ったあとの疲れ方
- 椅子から立ち上がるときの感覚
- 買い物袋を持ったときの余裕
- 外出することへの負担感
- 姿勢を保ちやすいと感じる時間
このような日常の変化にも目を向けてみましょう。
すぐに目に見える結果が出なくても、「以前より少し楽にできた」と感じることは、続けるための大切な手がかりになります。
痛みや強い不調があるときは無理をしない
運動中に鋭い痛み、めまい、息苦しさ、胸の違和感などがある場合は、すぐに中止してください。
膝や腰、肩などに痛みがある人、持病がある人、長く運動から離れていた人は、医師や理学療法士、運動指導の専門家などへ相談し、自分の状態に合う方法を選びましょう。
また、強い疲労感や息切れをすべて筋力低下のせいにしないことも大切です。日常生活に支障が出る状態が続いている場合は、医療機関へ相談してください。
何歳になっても、自分の足で動くために
筋力を意識する目的は、若い頃の体形に戻すことだけではありません。
行きたい場所へ自分で歩く。疲れを心配しすぎずに出かける。買い物や家事を無理なく続ける。筋肉を保つことは、これからも自分らしく暮らすための準備です。
大きな目標を立てる必要はありません。椅子から立つ、少し歩く、壁を押す。まずは今日の生活に、一つだけ小さな動きを加えてみませんか。
FAQ
Q1.ウォーキングだけでは足りませんか?
ウォーキングは、活動量を増やし、持久力を保つために役立ちます。一方、筋力を高めるためには、椅子からの立ち座りなど、筋肉に普段より少し大きな負荷をかける運動も取り入れることが勧められています。
どちらか一方を選ぶのではなく、無理のない範囲で組み合わせてみましょう。
Q2.筋力トレーニングは毎日行ったほうがよいですか?
毎日行う必要はありません。厚生労働省では週2~3日が推奨され、筋肉へ負荷をかけたあとは休息を設けることも大切だとされています。
始めたばかりの時期は回数を増やすことより、体調を確認しながら続けることを優先しましょう。
Q3.今から始めても遅くありませんか?
筋肉は年齢にかかわらず、適切な運動によって鍛えられるとされています。
ただし、若い頃と同じ内容を目指す必要はありません。今の自分が安全に続けられる方法を選び、少しずつ負荷を調整していきましょう。
参考文献
